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Seeking a magical Jamdani

幻想的な織物、Jamdaniを探して

インドを訪れるごとに、布やテキスタイルデザインの奥深さに引きこまれていくようになりました。カンタ織、カーディ、バンダニ、ウメドプーラの木版染め・・・その中でもいま一番心を揺り動かされているのは、ジャムダニ( Jamdani )と言われるインドの西ベンガル地方につたわる織物です。
ジャムダニは、最薄手の木綿などから作られる生地に、西ベンガル地方に伝わる幾何学模様などをあしらった織物をいいます。歴史的にこの織物が栄華をきわめたのは、17世紀のムガル王朝時代。歴代の王たちが、透けるほど薄いジャムダニをはおり、美しさを競ったといわれています。
私がその織物に出会ったのは、あるテキスタイル研究家の本を開いたとき。軽やかで、風のようになびき水のように輝く、その織物にすっかり心を奪われました。

思い立ったが吉日、さっそくカルカッタの家族に連絡をとり、いろいろな紹介を受け、ついにウエストベンガルのアートカウンシルの創設者である、Rubi 女史に出会うことができました。彼女は、80歳を超えてもなお現役で、西ベンガル地方の伝統工芸、織物を世界中のマーケットに紹介し、50年近く職人を支援し続けている人物。そんなパイオニアが、自分のためにジャムダニの職人が住む村の案内を手配してくれると言うのです。「日本からわざわざ来た女の子に、ジャムダニを見せてあげたいんですよ。」と笑っておっしゃいました。女の子・・・まさか、自分が32歳だとは告白できず。
話はとんとん拍子に進み、生産現場を見るために、その2日後には村へのツアーを組むことに。現地に詳しいドライバーやガイドにも付き添ってもらい、自分の長年の夢が叶うかもしれない、旅がはじまったのでした。

幻想的な織物、Jamdaniを探して

2日後の朝、カルカッタの渋滞を避けるために、まだ日も昇らない、薄暗い夜明けに家を出て、ワゴンに乗り込みました。ガイドの男性、スタッフのミラン、ドライバーに加え、西ベンガルに詳しい義父が付いてきてくれました。
カルカッタから車を走らせると、車窓の風景が、崩れ堕ちそうなビルやアパートから、だんだんと緑が増え農地が広がり、Hydroponics という水耕栽培の農地が広がっていきます。牛が行き来し、バナナの木が均等に並んでいて、その木と木の間をコリアンダーとマスタードの花が植えられ、花が満開に咲いていました。都市からは想像もできない、のどかな風景。

カルカッタから3時間ちかく経って、車はバラナシ近くの小さな村に到着。車を降りて、生産者の家に近づくと、カタン、カタンと木製の機織りをリズミカルに動かす音が外まで聞こえてきて、懐かしい感覚におちいります。
中に入っていくと、壁で覆われ、土の床がそのままむきだしの小さな小屋に、男性ふたりがそれぞれの機織りに座り、コットンのジャムダニを織っています。聞くと、生産者のお父さんであり、小屋の外でチャルカ(糸車)を動かし糸を紡いでいるのは彼の母親。
生産者の男性は、手織りのコットンであるKhadi と機械織りのCotton の違いも全て丁寧に「糸」に顕微鏡をあてて教えてくれました。よく見ると、やはり手紡ぎのKhadiはふわふわとして、糸が綿のように見えます。そのほかにも、Mugal silkやLinenといった違う素材も全て研究させてもらいました。それぞれの素材の持っている魅力の多彩さに、言葉がでません。生地だけみてもわからないことが、繊維でみるとすっと理解できるのです。

幻想的な織物、Jamdaniを探して

そのあと、村でも一番の腕を持つ、ジャムダニを織る女性を訪ねました。木と竹で作られた小屋に住む家族のお母さんである女性は、小屋の縁側のような場所に機織りを置き、風通しの良い場所で、なんとも軽快な音をたてながら、両手と両足を交互に押しながら機織りを織っていました。
織り目を数えながら、糸が彼女の針と指で器用に縦糸をくぐり、徐々に模様が浮かびあがっていく幻想的な様子は、ずっと眺めていたくなるほど美しい。
自分も体験にと、織らせてはもらうものの、はっきり言って「手も足も出ない」を文字通り、体現してしまいました。女性に「うふふ」と笑われる始末。自分はコピーライターでよかった、と心の中で思いました。

日本でいま伝統文化が見直されながらも、その技術の後継ぎが見つからないように、インドもまた、こういった伝統工芸は急速に消えつつあります。1日に1000枚の服を生産できる世の中で、この布に眠るおおきな価値を、インドの若い世代は忘れつつあります。そんな技術や職人に少しでも仕事を提供していくことも、 VEGANIEでしかできないことではないか、と思っています。
職人の立場や生活の向上を目指したい。カッコイイ話にきこえますが、伝統技術をどのような方法で多くの人に再び価値を見出してもらうか、買いたいほど好きになってもらうか。デザインを市場に合わせるのか。現地のデザインを生(なま)のままで提案するのか。そこには、甘くない、たくさんのハードルがありますが、遠くないつの日か、この西ベンガルの魂ともいえる、ジャムダニを商品化したいと考えています。

(著者:Chiaki)